エチオピアは、豊かな文化や歴史だけでなく、ユニークなカレンダーシステムでも知られています。エチオピアのカレンダーは、私たちが普段使っている12ヵ月のグレゴリオ暦とは異なり、13ヵ月で構成される「エチオピア暦」を使用しています。この興味深い事実を掘り下げていくと、エチオピアの独自性と、その背景にある歴史や文化の深さが見えてきます。この13ヵ月のカレンダーの謎に迫りましょう。
エチオピアカレンダーの基本構造

エチオピアのカレンダーは、他の多くの国で使われているグレゴリオ暦とは大きく異なるユニークなシステムです。エチオピアのカレンダーは13か月で構成されており、12か月は30日ずつ、残りの1か月は5日または6日(閏年の場合)で構成されています。この特異なカレンダーシステムは、エチオピアの文化や歴史に深く根付いており、エチオピアの人々の日常生活に大きな影響を与えています。
月の名前と日数
エチオピアカレンダーの12か月は、それぞれ30日で構成されています。各月の名前と順序は以下の通りです。
- メスケレ(መስከረም)
- テケメト(ጥቅምት)
- ハイダー(ኅዳር)
- タハサス(ታኅሣሥ)
- テル(ጥር)
- ヤカテイト(የካቲት)
- メガビット(መጋቢት)
- ミヤジア(ሚያዚያ)
- ゲンボート(ግንቦት)
- セネ(ሰኔ)
- ハムレ(ሃምሌ)
- ネハセ(ነሐሴ)
13番目の月は「パグメン(ጳጉሜን)」と呼ばれ、通常は5日間で、閏年には6日間になります。
エチオピアの閏年
エチオピア暦の閏年は、グレゴリオ暦のように4年に1度訪れます。閏年には、パグメンの月が1日増えて6日間になります。エチオピアの閏年の計算方法は、基本的にはグレゴリオ暦と同じです。ただし、エチオピアカレンダーは、閏年の規則において400年ごとの調整がないため、完全な一致はしません。
カレンダーの開始と新年
エチオピア暦の新年(エンキュタタシュ)は、グレゴリオ暦の9月11日(閏年の場合は9月12日)に始まります。この日は、エチオピアの人々にとって非常に重要な祝日であり、盛大に祝われます。新年の始まりは、エチオピアの文化や宗教的な儀式とも深く結びついています。
なぜ13か月なのか?エチオピア歴の起源と歴史
エチオピアのカレンダーが13か月で構成されている理由は、その起源と歴史に深く根ざしています。このユニークなカレンダーシステムは、エチオピアの文化、宗教、天文学的な知識の融合によって形成されました。
古代エジプト暦の影響
エチオピア暦のルーツは、古代エジプト暦にまで遡ります。古代エジプト暦も、12か月の各月が30日間で構成され、最後に5日間の追加期間が設けられていました。この追加期間は、エジプト神話で「エピゴメナル・デイズ」として知られ、神々の誕生日を祝う特別な期間でした。エチオピアは古代エジプトと密接な文化的交流があったため、このカレンダーシステムを採用し、独自に発展させたと考えられています。
アレキサンドリア暦の影響
紀元前1世紀にアレキサンドリアの天文学者がより精密な暦法を提案し、これがエチオピア暦に影響を与えました。アレキサンドリア暦は、古代エジプト暦をベースにしつつ、閏年の概念を取り入れました。エチオピア暦は、この影響を受けて、4年に1度の閏年を導入し、13か月目のパグメン(ጳጉሜን)の月を5日間(閏年には6日間)としました。
エチオピア正教会の役割
エチオピア正教会は、エチオピアのカレンダーシステムの維持と発展に重要な役割を果たしてきました。エチオピア正教会は、キリスト教の教義とエチオピアの伝統を融合させ、独自の宗教カレンダーを発展させました。エチオピアのカレンダーは、教会の祝日や祭日を基にした宗教的な行事と深く結びついています。このため、エチオピアのカレンダーは、宗教的な行事や季節の変化を反映する形で発展してきました。
エチオピア暦とグレゴリオ暦の違い
エチオピアで使用されるエチオピア暦と、我々日本人も含め世界中多くの人々に使用されるグレゴリオ暦は、構造や歴史、使用される目的において大きな違いがあります。これらの違いは、エチオピアの文化や宗教的背景、またはグレゴリオ暦の西洋の影響を反映しています。以下に、両カレンダーの主な違いについて詳しく見ていきましょう。
月と日数の違い
上で述べたように、エチオピア暦は13ヵ月で構成されています。12ヵ月がそれぞれ30日、13ヵ月目が5日間(閏年には6日間)です。1年は365日で、4年に1度(例外なし)の閏年には13ヵ月目が5日から6日に増え、366日となります。
グレゴリオ暦はご存じの通り12ヵ月で構成されており、各月の日数は28日から31日までで、月ごとに異なります。1年は365日で、4年に1度(例外あり)の閏年には2月が28日から29日に増え、366日となります。
年の開始と新年
エチオピア暦の新年(エンキュタタシュ)は、グレゴリオ暦の9月11日(閏年には12日)にあたります。この日は、エチオピアの人々にとって非常に重要な祝日です。
グレゴリオ暦の新年は1月1日で、世界中の多くの国で祝われる一般的な新年の日付です。
年号と紀元
エチオピア暦は独自の紀元を使用しており、グレゴリオ暦の年より7~8年遅れています。これは、エチオピア正教会がイエス・キリストの誕生年を計算する際に異なる基準を使用したためです。たとえば、2024年のグレゴリオ暦は、エチオピア暦の2016~2017年に相当します。
グレゴリオ暦は西暦(AD:Anno Domini)を使用しており、イエス・キリストの誕生を基準としています。現在の西暦は世界的に広く採用されています。
宗教的および文化的行事
エチオピア暦では、多くの祝日や祭日はエチオピア正教会の教義に基づき、エチオピア暦に従って計算されます。たとえば、クリスマス(ゲンナ)は1月7日に祝われ、復活祭(ファシカ)はエチオピア正教会の独自の計算方法に基づいて決定されます。
グレゴリオ暦では、多くのキリスト教国でクリスマスは12月25日に祝われ、復活祭(イースター)はグレゴリオ暦に基づいて計算されます。
エチオピアの新年(エンキュタタシュ)の祝い方
エチオピアの新年、「エンキュタタシュ」は、毎年グレゴリオ暦の9月11日(閏年には9月12日)に祝われます。この日は、エチオピア全土で非常に重要な祝日とされており、人々は新しい年の始まりを盛大に祝います。エンキュタタシュは、エチオピアの文化や伝統を象徴する多くの儀式や行事が行われる特別な日です。
歴史的背景
エンキュタタシュは、古代エジプトの影響を受けたエチオピア独自のカレンダーに基づいています。名前の由来は「贈り物の束」を意味し、ソロモン王とシバの女王の伝説に由来しています。この伝説では、シバの女王がエルサレムからエチオピアに戻る際にソロモン王から多くの贈り物を持ち帰ったとされ、その贈り物を祝う日がエンキュタタシュの始まりとされています。
準備と装飾
日本でも大晦日までに大掃除を済ませますが、エチオピアも同様にエンキュタタシュの前日までに家を掃除し、新年の準備を始めます。家の中や周囲を綺麗にすることで、新しい年を迎える準備を整えます。また、黄色い花「アデイ・アババ」(コスモス)が至るところに飾られ、街中や家々が鮮やかな黄色で彩られます。これらの花は、新年の希望や再生を象徴しています。
伝統的な儀式
エンキュタタシュの朝、家族や友人が集まり、伝統的な食事を共にします。この日の朝食には、「ドロワット」(鶏肉の煮込み)や「インジェラ」(エチオピアの伝統的なパンケーキ)が定番です。また、エチオピアコーヒーセレモニーも重要な儀式の一つであり、新年を迎える喜びを共有します。コーヒーセレモニーは、コーヒー豆を焙煎し、挽き、淹れる一連の過程を通じて、家族や友人との絆を深める重要な時間です。
多くのエチオピア人は、エンキュタタシュの朝に教会を訪れ、特別なミサに参加します。エチオピア正教会のミサは、祈りや賛美歌を通じて、新しい年の祝福と繁栄を祈願します。教会は、新年を迎えるために特別に装飾され、信者たちは新しい服を着て参加します
贈り物とお祝い
エンキュタタシュには、家族や友人同士で贈り物を交換する習慣があります。特に、子供たちは新しい服やおもちゃを受け取ることが多く、この日を楽しみにしています。大人たちは、新しい年の繁栄と幸福を願って、お互いに祝福の言葉を交わします。
エチオピア暦が現代社会に与える影響
エチオピア暦は、その独自の構造と文化的背景から、現代のエチオピア社会に多大な影響を与えています。以下に、その影響について詳しく見ていきましょう。
農業と経済への影響
エチオピアは農業が主要な産業の一つであり、エチオピア暦は農業活動の計画に重要な役割を果たしています。カレンダーの13ヵ月構成は、30日間の各月と追加の5日間(または6日間)のパグメンの月を含んでおり、農作業のスケジュールを調整するための便利なツールとなっています。これにより、農民たちは季節の変化や天候を考慮しながら、効率的に農業を行うことができます。
また、エチオピア経済全体においても、農産物の生産と取引のタイミングを正確に把握することが、市場の安定と成長に貢献しています。エチオピア暦の採用は、国内外のビジネスや商業活動においても、計画と効率を向上させる重要な要素となっています。
宗教と文化の保存
エチオピア暦は、エチオピア正教会の宗教的行事や祝日と密接に結びついています。多くの祝日や行事は、エチオピア暦に従って決定され、特定の聖人の記念日やキリスト教の主要なイベントを祝います。これにより、エチオピアの伝統と宗教的なアイデンティティが維持され、次世代に引き継がれています。
エチオピア暦を通じて、宗教的な行事や文化的な祝いが日常生活に深く根付いているため、社会全体においても結束力を強める助けとなっています。人々は共通の価値観と歴史を共有し、共同体としての結束を高めることができます。
観光と文化交流の促進
エチオピア暦は、エチオピアの観光業にもポジティブな影響を与えています。新年(エンキュタタシュ)や他の伝統的な祝日は、外国からの観光客や国内外の文化交流において重要なイベントとなっています。これらの祝日や行事は、エチオピアの文化と伝統を体験し、理解する機会を提供し、観光収入の増加に貢献しています。
まとめ
エチオピア暦は、その独自の13ヵ月構成と豊かな歴史・文化的背景から、エチオピア社会に多大な影響を与えています。エチオピア暦は単なる時間の計測を超えて、エチオピアの人々にとって誇りとアイデンティティの象徴であり、その歴史と未来を結ぶ重要な架け橋です。
参考
- エチオピアは今日、何月何日? – ホープ・インターナショナル開発機構
https://www.hope.or.jp/2019/09/13/ethiopian-calendar - エチオピア暦 – wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%94%E3%82%A2%E6%9A%A6
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