前回は、大学入試や資格試験で最も狙われる「動名詞の重要慣用表現」を成り立ちから学びました。
今回は、準動詞シリーズ全体の最大の山場であり、すべての受験生の「英語の運命を左右する」と言っても過言ではない超重要テーマ「不定詞と動名詞の使い分け」を完全攻略します!
学校の授業で「メガフェプス(MEGAFEPS)」などの呪文のような語呂合わせを聞いたことがある人も多いかもしれません。
「decide の後ろは to、enjoy の後ろは ing、これはひたすら暗記するもの……」
もしそう考えているなら、今日でその苦しい丸暗記を終わりにしましょう。
これらの使い分けは、第16講と第26講で学んだ「2つのコアイメージ」さえあれば、パズルのように完璧に整理できます。言葉のコアから、すっきりと納得して身につけていきましょう!
2つのコアイメージ:未来の to、現実の ing

他動詞の後ろにある「目的語(O)」のポジションに「〜すること」を置きたいとき、不定詞<to + 動詞の原形>にするか、動名詞<動詞の原形 + ing>にするかは、すべて「メインの動詞が持つニュアンス」によって論理的に決定されます。
判断基準となるのが、次の2つのコアイメージの対比です。
不定詞 to のコアイメージ:未来・未完了(これから向かう矢印)
to の本質は、これから向かう先を示す「右向きの矢印」でした。
そのため、不定詞は「これからすること(未来)」や「まだやっていないこと(未完了)」、そして「強い目標」を表す動詞と抜群に相性が良いです。
動名詞 ing のコアイメージ:現実・過去・反復(目の前にある躍動感)
ing の本質は、今まさに目の前で行われている「リアルな現実」でした。
そのため、動名詞は「実際に今やっていること(現実)」や「すでにやったこと(過去)」、そして「普段から繰り返していること(習慣・反復)」を表す動詞と抜群に相性が良いです。
この2大イメージを頭に置いた上で、それぞれのグループの動詞たちを詳しく見ていきましょう。
不定詞のみを目的語に取るグループ:未来志向
このグループに属する動詞は、すべて「まだやっていないけれど、これから先の未来に〜したい、〜する予定だ」という未来志向のニュアンスを持っています。そのため、右向き矢印の to を引き寄せます。
- decide to do (〜することに決める)
→ 決める瞬間には、その行動はまだやっていません。これからの未来に向かって「決心する」ので to になります。 - hope / wish / want / expect to do (〜することを望む / 期待する)
→ 望んだり期待したりするのは、すべて「これからの未来」のことですね。 - promise to do (〜することを約束する)
→ 約束する内容は、すべて「これこれから先の未来」に行うことです。 - refuse to do (〜することを拒否する)
→ 拒否する内容は、これからやろうと提案された「未完了」のことです。 - plan to do (〜することを計画する)
→ 計画するのは、すべて「これからの未来」のスケジュールです。
これらを「decide to, promise to …」と呪文のように唱えなくても、すべて「これから先の未来に向かっているな」という共通点があることが、スッキリと納得できるはずです。
動名詞のみを目的語に取るグループ:現実・過去・反復・逃避
このグループに属する動詞は、すべて「すでに体験した過去のこと」や「今目の前にある生々しい現実」を意識するニュアンスを持っています。そのため、躍動感のある現実の ing を引き寄せます。
語呂合わせのメガフェプス(MEGAFEPS)に沿って、本質的な理由を解説します。
- mind (〜することを気にする)
→ 気にするということは、頭の中で「リアルにその嫌な場面を想像している」状態(現実)です。 - enjoy (〜して楽しむ)
→ 楽しむためには、実際にその行為を「今やっている真っ最中(現実)」でなければ不自然です。 - give up (〜することを諦める)
→ 諦めるのは、これまでずっと「繰り返してやっていたこと(反復)」です。 - avoid (〜することを避ける)
→ 避けるためには、避ける対象がすでに「目の前にリアルに存在している(現実)」必要があります。 - finish (〜することを終える)
→ 終えるためには、これまでずっと「実際にやっていた最中のこと(現実・反復)」でなければなりません。 - escape / evade (〜することから逃れる)
→ 逃げるためには、逃げる対象がすでに「目の前に迫っている(現実)」必要があります。 - postpone / put off (〜することを延期する)
→ 延期するのは、すでに「決まっている生々しい予定(現実)」です。 - stop / quit (〜することをやめる)
→ やめるためには、これまでずっと「実際にやっていたこと(現実・反復)」でなければなりません。
※ stop to do に書き換えると、stop が自動詞(立ち止まる)になり、to が副詞的用法(〜するために)に化けて「〜するために立ち止まる」という全く別の意味になります。
このように、すべての動詞が「今やっていること」「すでにやったこと」「目の前にあること」を対象にしているため、未来志向の to ではなく、現実志向の ing が選ばれるのです。
ロジックがわかると、丸暗記の呪文がいかに不要かが分かりますよね。
両方を目的語に取るグループ:意味の変化に要注意!
最後のグループは、後ろに to と ing のどちらを置いても良い動詞たちです。
これらは、さらに「意味が変わらないグループ」と「意味が激変するグループ」に分かれます。
(1)意味がほとんど変わらないグループ
- begin / start (〜し始める)
- like / love / hate (〜するのが好きだ / 嫌いだ)
【例文】
He started to cry.
= He started crying. (彼は泣き始めた)
これらはどちらを置いてもほぼ同じ意味になります(厳密には ing の方がより生々しいリアルな感情になりますが、受験では同じと考えて大丈夫です)。
(2)意味がガラリと変わるグループ(超重要!)
入試記述問題や和訳問題の最大の標的になるのが、このグループです。
ここでも、暗記ではなく「未来の to」と「過去・現実の ing」の対比を使えば、一瞬で意味を導き出すことができます。
① remember の場合
- remember to do :(未来に向かって)これから〜することを覚えている(忘れずに〜する)
- remember doing :(過去に)実際に〜したことを覚えている
【例文】
Remember to lock the door. (忘れずにドアに鍵をかけなさい = これからかけることを覚えておきなさい)
I remember locking the door. (ドアに鍵をかけたことを覚えている = 過去に実際にかけた事実を覚えている)
② forget の場合
- forget to do :(未来に向かって)これから〜することを忘れる(〜し忘れる)
- forget doing :(過去に)実際に〜したことを忘れる
【例文】
Don’t forget to post the letter. (手紙を出し忘れないでね = これから出すことを忘れないで)
I will never forget visiting Kyoto. (京都を訪れたことを決して忘れません = 過去に実際に訪れた体験を忘れない)
③ regret の場合
- regret to do :(未来に向かって)残念ながらこれから〜する(残念ながら〜せざるを得ない)
- regret doing :(過去に)実際に〜したことを後悔する
【例文】
I regret to say that you failed the test. (残念ながら、あなたが試験に落ちたことをお伝えしなければなりません)
I regret telling her the truth. (彼女に真実を話してしまったことを後悔している)
④ try の場合
- try to do :(未来に向かって)〜しようと努力する、やってみようとする(実際にはまだできていない)
- try doing :(現実として)試しに実際に〜してみる
【例文】
He tried to open the window. (彼は窓を開けようと努力した = 重くて開かなかったかもしれない)
He tried opening the window. (彼は試しに窓を開けてみた = 実際に窓を開けてみた)
【実戦確認テスト】使い分けの魔法を実践せよ!
学んだイメージと動詞のニュアンスを使って、次の3問に挑戦してみましょう。
【第1問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
I really enjoy ( ) to music in my free time.
(A) to listen (B) listening (C) listen
【解答】(B)
【解説】
「私は自由な時間に音楽を聴いて楽しむ」という意味の文です。
動詞 enjoy(楽しむ)は、実際にその行為を「今やっている真っ最中(現実)」でなければ楽しむことはできないため、現実志向の動名詞(ing)のみを目的語に取る動詞です。
したがって、動名詞の形をした (B) listening が正解になります。
【第2問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
We decided ( ) our summer vacation in Hokkaido.
(A) to spend (B) spending (C) spend
【解答】(A)
【解説】
「私たちは夏休みを北海道で過ごすことに決めた」という意味の文です。
動詞 decide(決める)は、決める瞬間にはその動作はまだ行われておらず、「これからの未来に向かって決意する」という未来志向の動詞です。
したがって、未来・未完了のイメージを持つ不定詞<to + 動詞の原形>を伴う (A) to spend が正解になります。
【第3問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
I will never forget ( ) the beautiful sunset on the beach last summer.
(A) to see (B) seeing (C) see
【解答】(B)
【解説】
「私は去年の夏、ビーチで美しい夕日を見たことを決して忘れないだろう」という意味の文です。
文の最後に last summer(去年の夏)という過去を表す言葉があります。つまり、忘れないのは「過去に実際に体験した思い出(現実・過去)」です。 forget to do だと「これから〜するのを忘れる」という意味になってしまい文脈に合いません。過去に実際に〜したことを忘れる、という意味を表すために動名詞(ing)を用いるのが適切です。
したがって、(B) seeing が正解になります。
今回のまとめ
- 不定詞 to の本質:未来・未完了(これから向かう矢印)。decide, hope, promise, refuse などの未来志向の動詞が後ろに置く。
- 動名詞 ing の本質:現実・過去・反復・逃避(目の前にある躍動感)。enjoy, mind, stop, finish, avoid などの、実際にやっていることや、繰り返すことに関する動詞が後ろに置く(メガフェプス)。
- remember / forget / regret / try の使い分け:
- 後ろが to 不定詞 = 「これから先の未来のこと(〜する)」
- 後ろが 動名詞 = 「過去に実際にやったこと(〜した)」
お疲れ様でした!
丸暗記の代名詞だった「不定詞と動名詞の使い分け」を、コアイメージから論理的にすっきりと攻略することができましたね。この知識があれば、どのような応用問題が出ても、迷うことなく論理的に正解を選ぶことができます。
次回からは、大物ジャンル「分詞」の学習に入ります!
最初の授業は「第31講:現在分詞と過去分詞」をお届けします。「そもそも分詞ってなに?」「動詞と何が違うの?」という疑問の答えから、ing と 過去分詞 が持つ本当の姿を解説します。どうぞお楽しみに!

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