前回は、動名詞の基本ルールと、その裏にある「リアルな現実感」という本質を学びました。
今回は、動名詞シリーズの第2弾として「動名詞の意味上の主語」を攻略しましょう!
意味上の主語とは、一言で言うと「その動作を、実際には誰がやっているのか」をハッキリさせるための言葉のことです。
例えば、「私はテニスをするのが好きだ」であれば、テニスをするのは「私」自身なので問題ありません。
しかし、「私は彼がテニスをするのが好きだ(応援するのが好きだ)」と言いたい場合、「彼が」という主役パーツを動名詞の手前に補う必要があります。
不定詞のとき(第18講)は for や of などの前置詞を使いましたが、動名詞では英語の設計図が少し異なります。
受験生が最も引っかかりやすい「所有格」と「目的格」の使い分けの本質を、今回もロジックでスッキリ理解していきましょう!
そもそも意味上の主語は「いつ」必要なのか?
英語のルールでは、動名詞の動作を行う人が「文全体の主語」と同じである場合は、わざわざ意味上の主語を書く必要はありません。
【例文A】 I am sure of winning the game. (私はその試合に勝つことを確信している)
この文では、確信しているのも「私(I)」で、試合に勝つのも「私(I)」です。
このように、動作を行う人が一致している場合は、わざわざ winning の手前に my などを置く必要はありません。
では、次の文はどうでしょうか。
【例文B】 I am sure of his winning the game. (私は彼がその試合に勝つことを確信している)
この文では、確信しているのは「私(I)」ですが、実際に試合に勝つのは「彼(his)」です。
このように、文の主語と、動名詞の動作を行う人がズレている場合に、動名詞の手前に「意味上の主語」をポンと置いてあげる必要があるのです。
動名詞の意味上の主語の基本ルール
動名詞の意味上の主語を置く位置と形は、次のように決まっています。
【位置】
動名詞(ing)の「直前」に置く。
【形】
<代名詞の場合は、所有格(my, your, his, her, their など)>
<名詞(句)の場合は、そのまま(Tom, my father など)>
【例文】 I don’t like his speaking ill of others. (私は、彼が他人の悪口を言うのが好きではない)
speak ill of で「〜の悪口を言う」という句動詞です。
悪口を言う主役が「彼(his)」なので、speaking の直前に所有格の his を置いています。
名詞を置く場合は、I don’t like Tom speaking ill of others.(トムが悪口を言うのが好きではない)のように、Tom をそのまま直前に置きます。
受験生の疑問:目的格(me, him, them など)ではダメなの?
文法書や辞書を読んでいると、所有格の代わりに目的格(me, him, us, them など)が使われているのを見かけることがあります。
「結局、所有格と目的格、どちらを書けばいいの?」と混乱してしまいますよね。
結論から言うと、ルールは次のようになります。
- 正式な書き言葉(文法問題、英作文)では「所有格」が原則。
- カジュアルな話し言葉や、前置詞の後ろ、文の目的語になっている場合は「目的格」もよく使われる。
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。
これには、言葉が持つ「つながりの強さ」が関係しています。
所有格(my や his など)を使う理由:名詞との強い絆
動名詞は、動詞の性質を残してはいますが、本質的には「名詞」です。
名詞の前に置く言葉といえば、「私の本(my book)」や「彼の車(his car)」のように、所有格が来るのが最も自然ですよね。
his speaking というのも、ネイティブスピーカーの頭の中では「彼の、話すこと」という1つの名詞のカタマリとして非常に美しくまとまって聞こえるのです。そのため、正式なルール(文法問題など)では、所有格が最も正しいとされています。
目的格(him や me など)を使う理由:リアルな人物への意識
一方で、カジュアルな会話では、話し手は動名詞の動作そのものよりも、その動作を行っている「人物(彼や私)」に強く焦点を当てることがあります。
「彼(him)が、話している(speaking)」という、より動詞に近い生々しい躍動感を感じるため、目的格の him が使われるようになります。
特に、前置詞の後ろ(of him winning など)では、前置詞の後ろには目的格が来るという英語の強力なクセがあるため、目的格が好まれる傾向があります。
受験対策としては、「記述の英作文や文法問題で迷ったら、まずは原則である所有格(my, his など)を選ぶ!」 と決めておけば、減点されるリスクをゼロにすることができます。
固有名詞や「物」が主語になるときの例外ルール
意味上の主語が「Tom(トム)」などの固有名詞や、「the train(電車)」などの物(無生物名詞)である場合は、所有格(Tom’s や the train’s)にせず、そのままの形(目的格と同じ形)で置くのが一般的です。
【例文】 He was disappointed at the train being delayed. (彼は電車が遅れたことにがっかりした)
この文で、遅れた(being delayed)のは「電車(the train)」です。
電車は物(無生物)なので、わざわざ the train’s と所有格にする必要はなく、そのまま the train と置いてあげれば大丈夫です。
【実戦確認テスト】意味上の主語を完璧に見抜け!
学んだルールを使って、次の3問に挑戦してみましょう。
【第1問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
Would you mind ( ) opening the window? It’s a bit hot in here.
(A) mine (B) my (C) I
【解答】(B)
【解説】
「窓を開けてもよろしいですか(私が窓を開けるのを気にしますか)」という意味の文です。
mind は「〜を気にする」という他動詞で、後ろに動名詞を目的語(O)として取ります。ここで、窓を開ける(opening)のは「私(I / my / me)」です。動名詞の意味上の主語は、動名詞の直前に置く必要があります。 代名詞を意味上の主語にする場合の原則的な形は、所有格です。
したがって、所有格である (B) my が正解になります。 (A) mine は所有代名詞、 (C) I は主格なので不可。
【第2問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
The teacher complained about ( ) making too much noise in class.
(A) we (B) our (C) ours
【解答】(B)
【解説】
「先生は、私たちが授業中に騒ぎすぎていることについて不満を言った」という意味の文です。
about は前置詞なので、後ろにある making too much noise は動名詞のカタマリです。授業中に騒いでいる(making)のは「私たち(we / our)」です。動名詞の直前に置いて、動作を行う主役を示す「意味上の主語」を補う必要があります。代名詞の意味上の主語は原則として所有格にします。we の所有格(私たちの〜)は our です。したがって、(B) our が正解になります。 ours は「私たちのもの(所有代名詞)」なので不可です。
【第3問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
I cannot imagine Tom ( ) such a stupid thing.
(A) say (B) saying (C) to say
【解答】(B)
【解説】
「私はトムがそんなばかなことを言うなんて想像できない」という意味の文です。
imagine は「〜を想像する」という他動詞で、後ろに動名詞を目的語(O)として取る代表的な動詞です。今回の文では、imagine の後ろに Tom という名詞(意味上の主語)があり、その後に動作を続ける形になっています。「トムが〜すること」という動名詞のカタマリ(Tom saying…)を imagine の後ろに作るのが適切です。
したがって、動名詞の形をした (B) saying が正解になります。 (C) は不定詞なので、imagine の後ろに直接置くことはできません。
今回のまとめ
- 動名詞の意味上の主語:動名詞の動作を行う人が、文全体の主語と異なるときに、動名詞の「直前」に補う。
- 代名詞の意味上の主語:原則として「所有格(my, his など)」を使う。カジュアルな表現や前置詞の後ろでは「目的格(me, him など)」が使われることもあるが、入試問題や記述では所有格が安全。
- 名詞や物の意味上の主語:人名や無生物名詞の場合は、所有格(’s)にせず、そのままの形で直前に置く。
お疲れ様でした!
不定詞の「for + 人」とは異なる、動名詞ならではの「直前に所有格を置く」というルールが、言葉本来のつながり(名詞 + 所有格)からすっきりと理解できたでしょうか。
次回は「第28講:動名詞の否定/受身/完了形」へと進みます。
第20講で学んだ不定詞の発展形と同じように、動名詞にも「否定(〜しないこと)」「受身(〜されること)」「完了形(メインの動詞よりも過去のこと)」という3つのスパイスを加えるルールがあります。
今回の意味上の主語の知識とも絡み合いながら、より複雑な文を読み解くための強力な武器を授けます。どうぞお楽しみに!
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