前回は、不定詞の動作を「誰がやるのか」をハッキリさせる「S V O to do の構文」を学びました。
今回は、不定詞(to + 動詞の原形)というシンプルな形に、次の3つの重要なスパイスをドッキングさせる方法を攻略します。
- 否定:〜しないこと
- 受身:〜されること
- 完了形:メインの動詞よりも前の(過去の)こと
一見すると複雑な形に見えますが、それぞれのルールが生まれた「理由」を理解すれば、パズルのように簡単に組み立てることができます。
入試の英文法・英作文で得点差がつくこの3つの発展パターンを、本質からしっかり身につけていきましょう!
不定詞の否定:not は「直前」に置くのが英語の鉄則
まずは一番シンプルな「否定」のスパイスから始めましょう。
不定詞のカタマリを否定して「〜しないこと」と言いたいとき、否定語の not や never はどこに置けばいいでしょうか。
結論から言うと、ルールはこれだけです。
ルール: not は to の「直前」に置く。
→ <not + to + 動詞の原形>
【例文】 My father told me not to play video games. (父は私に、テレビゲームをしないようにと言った)
なぜ not を to の直前に置くのでしょうか。
英語には「否定語(not や never)は、自分が否定したい言葉のすぐ手前に置く」という強力な鉄則があります。
この例文で、お父さんが言った「しないように(not)」の対象は何でしょうか。
「言うこと(told)」を否定しているわけではありません。お父さんは「言った」のです。 否定したいのは、そのすぐ後ろにある「ゲームをすること(to play)」ですね。
ですから、否定したいターゲットである to play のすぐ手前に not をポンと置くのです。
これを、間違えて「told not me to play」や「told me to not play」などとしてはいけません。「否定したいものの直前に置く」という英語の絶対的なルールを思い出せば、迷うことはありません。
不定詞の受身:主語との「する・される」の関係を見抜く
次は「受身(〜されること)」のスパイスです。
受動態の基本は第13講で学んだ通り <be動詞 + 過去分詞> です。これと不定詞(to + 動詞の原形)をドッキングさせると、どのような形になるでしょうか。
to の後ろは「動詞の原形」にしなければならないため、be動詞は原形の be に固定されます。
<to be + 過去分詞(〜されること)>
【例文】 He wants to be loved by everyone. (彼はみんなに愛されたいと思っている)
この文では、he(彼)が「愛する(love)」のではなく、みんなから「愛される(be loved)」ことを望んでいます。
このように、文の主語と不定詞の動作の間に「〜される」という受け身の関係があるときは、必ず <to be + 過去分詞> の形を使います。
長文読解や英作文で「to love」にするべきか「to be loved」にするべきか迷ったら、「主語は、その動作を『する』のか?それとも『される』のか?」というカメラのピントを意識して判断するようにしましょう。
不定詞の完了形:メインの動詞よりも「昔のこと」を表す

いよいよ、多くの受験生が苦手とする「完了形(to have + 過去分詞)」のスパイスです。
この形は、文全体の動詞(メインの動詞)が表す時間と、不定詞の動作が起こった時間に「ズレ」があるときに使われます。
学校では「完了不定詞」などと難しい名前で呼ばれますが、仕組みはとてもシンプルです。
ルール: 文全体の動詞よりも「古い(過去の)内容」を表すときは、完了形のスパイスを使う。
→ <to have + 過去分詞>
次の2つの文をじっくりと見比べてみてください。
① 普通の内容(時間のズレがない)
She seems to be rich. (彼女はお金持ちのようだ)
- seems(〜のように見える)
→ 現在 - to be rich(お金持ちである)
→ 現在
彼女の様子を見ているのも「今」で、彼女がお金持ちなのも「今」です。時間が一致しているため、普通の [to + 原形] を使います。
② 時間のズレがある内容
She seems to have been rich in her youth. (彼女は若い頃、お金持ちだったようだ)
- seems(〜のように見える)
→ 現在 - to have been rich(お金持ちだった)
→ 過去
彼女の様子を見ているのは「今」ですが、お金持ちだったのは「若い頃(過去)」の話です。
このように、メインの動詞(seems = 現在)よりも、不定詞の中身(お金持ちだった = 過去)のほうが、時間が1つ古いですよね。
この「時間のズレ」を相手に伝えるために、不定詞に完了形のスパイス(have + 過去分詞)をドッキングさせて [to have been] という形にするのです。
これは、第11講で学んだ「助動詞 + 完了形(must have + 過去分詞 など)」と全く同じ仕組みです。
助動詞も不定詞も、後ろに動詞の原形しか置けないというルール(呪縛)があります。 そのため、過去形(was や did)をそのまま置くことができません。
そこで、過去を表す代わりの道具として「have + 過去分詞」を後ろにくっつけるのです。
英語のこの合理的なシステムが理解できれば、完了不定詞の形もすんなりと納得できるはずです。
【実戦確認テスト】発展パターンを解きほぐせ!
学んだ否定・受身・完了形のルールを使って、次の3問に挑戦してみましょう。
【第1問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
I promised my teacher ( ) late for school again.
(A) to be not
(B) not to be
(C) to not be
【解答】(B)
【解説】
「二度と学校に遅刻しないと先生に約束した」という意味の文です。不定詞(to be late)を否定して「遅刻しないこと」と言いたいため、否定語の not を補う必要があります。英語のルールでは、否定語は「自分が否定したい言葉の直前」に置きます。したがって、to be late の直前に not を置いた (B) not to be が正解になります。
【第2問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
She is proud her son to ( ) a prize.
(A) win
(B) be won
(C) have won
【解答】(C)
【解説】
「彼女は息子が賞を取ったことを誇りに思っている」という意味です。her son が不定詞の意味上の主語として置かれています。
ここで時間に注目しましょう。彼女が誇りに思っているのは「今(is proud)」ですが、息子が賞を取ったのは「それ以前(過去)」の出来事のはずです。メインの動詞(現在)よりも、不定詞の動作(過去)のほうが時間が1つ古いため、時間のズレを表す完了形のスパイスをドッキングさせる必要があります。したがって、(C) have won が正解になります。
【第3問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
Nobody likes to ( ) in public.
(A) laugh
(B) be laughed
(C) be laughed at
【解答】(C)
【解説】
「人前で笑われたい(ばかにされたい)と思う人は誰もいない」という意味の文です。主語の Nobody(誰も〜ない)と laugh(笑う)の関係を考えます。人が誰かを笑うのではなく、主語が人から「笑われる」という受け身の関係なので、不定詞を受身のスパイス <to be + 過去分詞> にする必要があります。
また、第15講で学んだ「句動詞の受動態」の知識も思い出してください。「笑う、ばかにする」は laugh at という2つの言葉が接着剤でくっついたカタマリです。受動態にしてもこのカタマリは引き裂けないため、at を残した be laughed at にしなければなりません。これらを組み合わせると、 to be laughed at という形になります。したがって、(C) be laughed at が正解になります。
今回のまとめ
- 不定詞の否定:否定したい言葉の直前に not を置くため、<not + to + 動詞の原形> の形になる。
- 不定詞の受身:主語と動作の間に「〜される」の関係があるときは、<to be + 過去分詞> を使う。
- 不定詞の完了形:メインの動詞が表す時間よりも、不定詞の内容のほうが古い(過去の)ときに、時間のズレを表す <to have + 過去分詞> を使う。
これで、不定詞の少し複雑な形(否定・受身・完了形)も完全に自分のものにできましたね!
次回は、不定詞の3つの用法の2つ目である「第21講:不定詞の形容詞的用法」へと進みます。
「名詞を修飾する」という形容詞本来の役割を不定詞がどのように果たすのか、そして受験生が和訳問題で最も間違えやすい「後ろから名詞にかかる時の秘密のルール」を分かりやすく解き明かします。どうぞお楽しみに!
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