前回は、英語の「頭でっかち」を解消するために、仮のItを置いて本当の主語や目的語を後ろに回す「形式主語・形式目的語構文」を学びました。
今回は、その不定詞のカタマリ(to + 動詞の原形)の中に隠されている、超重要なルールを攻略します。
不定詞は「動詞」から生まれた言葉なので、当然そこには「その動作を誰がやるのか」という「動作の主人公(主語)」が存在します。
「なぜ、for + 人 + to do になるの?」
「どんなときに、for が of に変わるの?」
学校で言われるがままに丸暗記しているこのルールの本質を、前置詞のイメージを使って世界一シンプルに解き明かします!
なぜ「意味上の主語」が必要なの?:言わなくてもわかるなら書かない!
まずは、なぜ「意味上の主語」という大層な名前のルールが必要なのか、その根本から考えましょう。
次の2つの文を比べてみてください。
- I want to study English. (私は英語を勉強したい)
- It is difficult to study English. (英語を勉強することは難しい)
文1の「study(勉強する)」という動作を行うのは誰でしょうか?
文全体の主語が「I(私)」なので、言うまでもなく「私が勉強する」のだとわかります。このように、文全体の主語と不定詞の主語が同じときは、わざわざ誰がやるかを書く必要はありません。
文2はどうでしょうか。
「勉強することが難しい」と言っていますが、これは一般的に「(誰にとっても)難しい」という意味です。このように、世間一般の人々が動作の主人公である場合も、わざわざ書く必要はありません。
では、次のように「私にとって」難しいと言いたいときはどうすればいいでしょうか。
「英語を勉強することは[私にとって]難しい」
文全体の主語は仮の主語である It なので、このままでは「誰が勉強するのか」がハッキリしません。
そこで、不定詞(to study)の前に、「この動作は[この人]がやりますよ!」という動作の主人公(意味上の主語)をポンと置いてあげる必要が出てくるのです。
なぜ「for」を使うの?:for の本質は「〜に向かって」
不定詞の動作の主人公を表すとき、基本的には次のように表現します。
【基本の設計図】
It is + 形容詞 + for + 人 + to + 動詞の原形 (人が〜することは…だ)
【例文】
It is difficult for me to study English. (私が英語を勉強することは難しい)
ここで使われている前置詞の「for」に注目してください。
なぜ他の前置詞ではなく「for」が使われるのでしょうか。
第4講の未来表現(will / be going to)や第14講の受動態でも触れてきましたが、前置詞 for の本質は「〜に向かって(方向・対象)」です。 「これから先の目的地に向かって、気持ちや目線が向いている状態」を表します。
上の例文で言うと、It is difficult(難しいなぁ)という評価の目線が、誰に向かって注がれているかというと、「me(私)」という対象に向かって注がれています。
私というターゲットに向かって「難しい」と言っているため、方向を表す for me を to不定詞 の手前に置くのです。
なぜ「of」に変わるの?:of の本質は「〜の一部」
入試で最も出題されるのが、この「for」が「of」に化けるパターンです。まずは学校で習うルールを確認しましょう。
【例外ルール】
人の「性質や性格」を表す形容詞が来るときは、for ではなく「of」を使う。
It is + 人の性質を表す形容詞 + of + 人 + to + 動詞の原形 (〜するなんて、人は…だ)
【例文】
It is kind of you to help me. (私を助けてくれるなんて、あなたは親切ですね)
なぜ、人の性質を表す形容詞(kind や foolish など)が来ると、for ではなく of になるのでしょうか。
それは、前置詞「of」の本質が「〜の一部(所属・切り離せない関係)」だからです。
「親切さ(kind)」や「愚かさ(foolish)」というのは、その人自身の「性格(その人の一部)」ですよね。その人の内側からにじみ出ている、切り離せない性質について語っているため、所属を表す「of you(あなたの一部分としての親切さ)」という表現になるのです。
人の性質を表す最重要形容詞リスト
入試で of とセットで使われる形容詞は決まっています。すべて「人の性格や人柄」を表す言葉です。
- kind(親切な)
- nice(優しい、親切な)
- polite(礼儀正しい)
- brave(勇敢な)
- clever(賢い)
- foolish / silly(愚かな)
- careless(不注意な)
- rude(失礼な)
これらの形容詞が It is の後ろに見えたら、「あ、後ろは for ではなく of + 人 になるな!」と一瞬で見抜けるようになっておきましょう。
【実戦確認テスト】意味上の主語を見極めよ!
学んだ前置詞のコアイメージを使って、次の3問に挑戦してみましょう。
【第1問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
It is important ( ) you to tell the truth.
(A) for (B) of (C) with
【解答】(A)
【解説】
文の骨組みを確認します。It(仮の主語) is important(重要だ)ときて、後ろに to tell the truth(真実を話すこと:本当の主語)があります。空所の後ろの you は、不定詞の動作(真実を話すこと)を行う「意味上の主語」です。 直前にある形容詞 important(重要な)は、客観的な状況を表す言葉であり、人の「性格や人柄(その人の一部)」を表す言葉ではありません。したがって、重要であるという目線が「あなた」という対象に向かって注がれていることを表すため、(A) for が正解になります。
【第2問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
It was careless ( ) him to leave his umbrella on the train.
(A) for (B) of (C) by
【解答】(B)
【解説】
形容詞の careless(不注意な)に注目します。「電車に傘を置き忘れるなんて、彼は不注意だった」という意味の文です。 不注意というのは、彼自身の「性格や性質(彼の一部)」を表す言葉です。したがって、人の一部としての性質を語る前置詞である of を用いる必要があるため、(B) of が正解になります。
【第3問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
It is rude ( ) you to point at other people.
(A) for (B) of (C) to
【解答】(B)
【解説】
形容詞の rude(無礼な、失礼な)に注目します。 「他人を指差すなんて、あなたは失礼だ」という意味の文です。「失礼、無礼」というのは、その人の「人柄や性格(その人の一部)」を表す言葉です。したがって、人の性質を指し示す前置詞である of を用いる必要があるため、(B) of が正解になります。
今回のまとめ
- 不定詞の意味上の主語とは、不定詞の動作を「誰がやるのか」をハッキリ指し示すもの。
- 原則は「for + 人 + to do」:評価の目線が、その人(for = 〜に向かって)に注がれている。
- 例外は「of + 人 + to do」:親切(kind)や不注意(careless)などの「人の人柄・性格」を表す形容詞のときは、その人の一部(of = 所属)を表す。
これで、不定詞の動作の主人公を完璧に操ることができるようになりました!
次回は、今回学んだ「動作の主人公」の知識がさらに深く関わってくる、動詞の重要語法「第19講:S V O to do の構文(tell/allow/force A to do などの重要語法)」をお届けします。どうぞお楽しみに!

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