前回は、不定詞が「〜すること」という名詞にワープして、文の中で主語、目的語、補語のポジションに収まるルールを学びました。
今回は、その知識から発展した「英語の超重要システム」を攻略します。
中学校で、
It is easy to study English.(英語を勉強することは簡単だ)
という文を習ったとき、
「なぜわざわざ仮の It を置いて、本当の主語である to study English を後ろに回すの?」
「最初から To study English is easy. でいいじゃないか!」
と思ったことはありませんか?
実は、英語を話す人々がこれを好むのには、英語という言語の根本に関わる「どうしてもそうしたい理由」があります。
今回は、このシステムの本質と、受験生が英作文や文法問題で最も失点しやすい「形式目的語構文」の罠を世界一シンプルに解説します!
なぜ「it」を置いて、後ろに回すの?:英語は「頭でっかち」が大嫌い!
まずは、このシステムのコアイメージから迫りましょう。
英語には、「主語(頭)が長すぎる文(頭でっかちな文)を嫌う」という非常に強い性質があります。
さらに、もう1つ大切なルールがあります。それは、「長い情報や、重要な情報は文の最後の方に置く(エンド・ウェイトの法則)」というものです。
例えば、次の2つの文を比べてみましょう。
- To study English every day is very important for our future.
- It is very important for our future to study English every day.
どちらも同じ意味(=「毎日英語を勉強することは、私たちの未来にとって非常に重要だ」)ですが、英語を話す人々は、文2を圧倒的に好みます。
文1は、動詞 is の前に 7語 もの長い主語がドカンと置かれています。
これだと、聞いている人は「主語がいつ終わって、心臓(動詞)がいつ出てくるのか」が分からず、聞いていて非常に疲れてしまいます。
そこで、英語では素晴らしい解決策を導入しました。
主語の位置には、中身が空っぽの『仮の主語(It)』をポンと置いておこう。
そして、長い本当の主語(to以下)は、文の最後に回してスッキリさせよう!
これが、形式主語(仮主語)構文が生まれた本当の理由です。
It は単なる「席取りのマーク(中身は空っぽ)」なので、訳すときは「それは」と訳してはいけません。
形式主語構文:It is … to do. の設計図
まずは、主語を後ろに回すパターンです。
【基本の設計図】
It is + 形容詞 + to + 動詞の原形
【例文】
It is difficult to read this book. (この本を読むことは難しい)
この文では、It が仮の主語、to read this book が本当の主語(真主語)です。このItを「それは」と訳して「それは難しい、この本を読むことは」のように不自然に繋げてはいけません。「〜することは…だ」と、to以下を主語としてスッキリ訳しましょう。
時間と費用の「IT構文」も、本質はすべて仮主語!
受験の並べ替え問題で狙われやすい次の2つの公式も、実はこの形式主語システムが根っこにあります。
- It takes [人] [時間] to do
「人が〜するのに(時間)がかかる」 - It costs [人] [費用] to do
「人が〜するのに(費用)がかかる」
【例文】
It took me three hours to finish the homework. (私が宿題を終わらせるのに3時間かかった)
直訳すると、「宿題を終わらせること(本当の主語: to finish…)は、私から3時間を奪い去った(took me three hours)」となります。
やはり「主語が長すぎる」のを嫌い、仮主語の It を頭に置いて、本当の主語である to 不定詞を一番最後に回しているのです。
cost(費用がかかる)の場合も全く同じです。
【例文】
It costs you ten dollars to buy the book.(その本を買うのに10ドルかかる)
この2つは「takes = 時間」「costs = 費用」という対応関係が英作文で一瞬で引き出せるように、セットで記憶に刻んでおきましょう!
形式目的語構文:なぜ「C」の後ろに「O」を置くの?
主語を後ろに回すシステムがあるなら、当然「目的語(O)」を後ろに回すシステムもあります。これが、多くの受験生が苦手とする「形式目的語(仮目的語)」です。
まずは、第3講で学んだ「第5文型(SVOC)」を思い出してください。
第5文型は、「Sは Oを Cの状態にする(O = C)」という設計図でした。
この文型において、目的語(O)のポジションに「不定詞(to + 動詞の原形)」を置きたいとき、恐ろしい問題が発生します。
例えば、「私は、毎日英語を勉強することが大切だとわかった」と言いたいとします。これをそのままSVOCの設計図に当てはめると、次のようになります。
【仮の文(文法的に大バツ)】
I found to study English every day important.
※ I(S) found(V) to study English every day(長いO) important(C:形容詞).
この文を見てどう思いますか?
動詞 found の後ろに長いOが続き、最後にポツンと Cである important(形容詞)が置かれています。
これだと、聞いている人は「どこまでがOで、どこからがCなのか」の境界線がまったく見えなくなってしまいます。文が完全に壊れてしまっている状態です。
そこで、先ほどの「頭でっかち解消システム」を目的語にも適用します!
目的語のポジションには、空っぽの『仮の目的語(it)』を置いて、すぐにC(形容詞)を言おう。
そして、長い本当の目的語(to以下)は最後に回そう!
このシステムを使って書き直したのが、次の正しい文です。
【正しい文】
I found it important to study English every day.
※ I(S) found(V) it(仮O) important(C) to study English every day(真O).
こうすれば、動詞(found)のすぐ後ろに「it + 形容詞」というスッキリした形が並ぶため、聞き手は一瞬で「第5文型(SVOC)だな!」と構造を理解できます。
【罠】形式目的語「it」の書き忘れに注意!
この形式目的語構文は、英作文や並べ替え問題で非常にミスが出やすい部分です。最も多い失点は、仮の目的語である「it」を書き忘れてしまうことです。
×:I found important to study …
英語では、SVOCのOが不定詞になるとき、形式目的語の「it」を置くことは「義務」です。絶対に省略することはできません。
この構文は、次の4つの動詞(頭文字をとって MTFK と覚えましょう!)で使われることがほとんどです。
- make it C to do(〜することをCにする)
- think it C to do(〜することをCだと思う)
- find it C to do(〜することをCだと知る、わかる)
- keep it C to do(〜することをCに保つ)
この4つの動詞の後ろに「it + 形容詞 + to不定詞」の並びを見つけたら、「あ、形式目的語のシステムだな!」と一瞬で見抜けるようにしておきましょう。
【実戦確認テスト】英語の解消システムを見抜け!
学んだ形式主語・目的語の本質を使って、次の3問に挑戦してみましょう。
【第1問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
( ) is very dangerous to swim in this river.
(A) That (B) It (C) This
【解答】(B)
【解説】
文の後半に to swim in this river(この川で泳ぐこと)という、不定詞のカタマリ(名詞句)があります。これが文全体の本当の主語です。主語が長いため、文頭に仮の主語を置く「形式主語構文」になっています。 仮の主語として使える単語は It のみであるため、(B) It が正解になります。
(A) の That や (C) の This を仮の主語として使うことはできません。
【第2問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
The internet makes ( ) easy to get information.
(A) that (B) this (C) it
【解答】(C)
【解説】
文の骨組みを確認します。 The internet(S) makes(V) ( )(O) easy(C:形容詞) to get information(本当のO). 「情報を手に入れることを、簡単にする」という第5文型(SVOC)の文です。
目的語となる不定詞のカタマリ(to get information)が長いため、本来の目的語のポジションに仮の目的語を置き、本物を後ろに回す「形式目的語構文」を作る必要があります。仮の目的語として置くことができる単語は it のみなので、(C) it が正解になります。
【第3問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
I found it necessary ( ) other people’s opinions.
(A) listen to (B) to listen to (C) listened to
【解答】(B)
【解説】
文の骨組みを確認します。 I(S) found(V) it(仮のO) necessary(C:形容詞)ときています。
「仮の目的語(it)」が置かれているということは、文の最後に「本当の目的語(〜すること)」となる不定詞のカタマリを置く必要があります。したがって、不定詞(to + 動詞の原形)の形になっている (B) to listen to が正解になります。
今回のまとめ
- 英語は、主語や目的語が長すぎる「頭でっかち」な文が大嫌い。
- 形式主語構文(It is … to do):頭でっかちを防ぐため、仮の It を文頭に置き、長い本当の主語(to以下)を後ろに回す。
- 形式目的語構文(make / find / think / keep it C to do):第5文型(SVOC)において、Oが不定詞のときに C(形容詞)が埋もれるのを防ぐため、仮の it を置いて本物を最後に回す。
- 形式目的語の「it」は絶対に省略できない。記述や英作文での書き忘れに要注意!
これで形式主語・目的語のシステムは完璧です!
次回は、この不定詞のカタマリ(〜すること)の中で、「誰がその動作を行うのか」をはっきりさせるための超重要ルール「第18講:不定詞の意味上の主語(動作の主人公を指し示す)」をお届けします。どうぞお楽しみに!

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