前回は、目的語が複数ある文や、補語が残る少し複雑な文(第4・第5文型)の受動態を学びました。
今回は、受動態シリーズの最終回です。テーマは「句動詞(群動詞)の受動態」と「受動態の重要表現」です。
look up to(尊敬する)や speak to(話しかける)のように、いくつかの単語が合体して1つの動詞として働くものを「句動詞(群動詞)」と呼びます。
これらを受動態にするとき、文法の試験で「前置詞が2つ並んでいて変な形だけど、これであっているの?」と受験生が不安になる特徴的な形が現れます。
なぜそんな形になるのかという理由と、実際の入試で超頻出の「by 以外の前置詞を使う重要表現」を、暗記だけに頼らず根本から理解していきましょう!
句動詞の受動態:引き裂けない「強力な接着剤」

英語には、2語以上の単語がセットになって初めて、1つの動詞と同じ意味を表す表現がたくさんあります。これを「句動詞」または「群動詞」と呼びます。
例えば、次のようなものです。
- speak to(話しかける)
- laugh at(笑う、ばかにする)
- look up to(尊敬する)
- take care of(世話をする)
これらの表現は、セットになって初めてその意味になります。
つまり、単語と単語の間に「超強力な接着剤」が塗られていて、絶対に引き裂くことができない1つの大きな動詞(カタマリ)として扱わなければなりません。
では、これらを受動態にするとどうなるでしょうか。 次の例文を使って考えてみましょう。
【能動態の文】
They laughed at Tom. (彼らはトムのことを笑った)
この文では、laughed at という2つの言葉が強力に接着して1つの動詞として働いています。目的語は Tom です。
受動態を作るルールに従って、目的語の Tom を主語(カメラのピント)に持ってきてみましょう。
【受動態の文】
Tom was laughed at by them. (トムは彼らに笑われた)
動詞の部分に注目してください。
was laughed at という受動態のカタマリの後ろに、行為者を表す by them がそのままくっついています。
結果として「at by」という、前置詞が2つ隣り合うとても不思議な形になりました。
初見の高校生は「前置詞が連続するなんて文法的に絶対に間違っている!」と思って、この選択肢を削ってしまいがちです。
しかし、ここで先ほどの「強力な接着剤」を思い出してください。
laugh と at は引き裂くことができない1つの動詞なので、受動態にするからといって at を勝手に消したり、離したりすることは絶対にできません。
laughed at という大きな動詞の後ろに、受動態のルールである by them が機械的にくっついた結果、前置詞が2つ並ぶのが「正しい英語」になるのです。
もう1つ、さらに前置詞が重なる例を見てみましょう。
【能動態の文】
We look up to our teacher. (私たちは先生を尊敬している)
※ look up to で「1つの大きな動詞(尊敬する)」です。
【受動態の文】
Our teacher is looked up to by us. (私たちの先生は、私たちに尊敬されている)
今度は look up to のカタマリをそのまま残したため、後ろに by が続いて「to by」という並びになりました。これも全く問題なく、大正解の英語です。
句動詞を受動態にするときは、 「接着剤でくっついたカタマリは絶対に引き裂かない!そのままの形で受動態にする!」 この鉄則を頭に叩き込んでおきましょう。
by 以外の前置詞を使う受動態:なぜ by を使わないのか?
受動態といえば「be動詞 + 過去分詞 + by(誰々によって)」がお決まりのパターンですよね。
しかし、大学入試では「by 以外の前置詞を使う受動態」がこれでもかというほど出題されます。
「なぜ by ではなく、別の前置詞を使うのか?」
実は、これにも明確な理由があります。
そもそも前置詞 by のイメージは「〜のそばに(近接)」であり、そこから「直接的な原因・強力なパワー」を表します。
つまり、動作を直接行った「人間などの強力な行為者」が後ろに来るときに by が使われます。
一方で、話し手が「直接的な動作」ではなく、「感情がその対象に向かっている状態」や「物理的な素材で覆われている状態」を表現したいときは、それぞれの状態にぴったりな前置詞(at, with, in, to など)が選ばれるのです。
受験で合格点を取るために、絶対に外せない最重要グループを整理しました。
グループA:感情の対象を表す「at」
感情の動きは、特定の対象に向けて矢印が「ピタッと一点に狙いを定める(at)」イメージを持っています。そのため、感情の受け身には at が使われます。
- be surprised at(〜に驚く)
※ 驚きの矛先がその一点に集中しているイメージ。 - be shocked at(〜にショックを受ける)
- be disappointed at(〜に失望する)
グループB:道具や満たしている状態を表す「with」
前置詞 with は「〜と一緒に(同伴・付着)」というイメージを持っています。何かがくっついて満たされている状態を表すため、これらの表現で使われます。
- be covered with(〜で覆われている)
※ 雪などが地面にくっついて覆っているイメージ。 - be filled with(〜で満たされている)
- be satisfied with(〜に満足している)
グループC:環境や分野を表す「in」
前置詞 in は「〜の中に(空間・所属)」というイメージです。ある分野や関心の範囲の中にすっぽり入り込んでいる状態を表します。
- be interested in(〜に興味がある)
※ 興味のある空間の中に自分が入り込んでいるイメージ。 - be injured in(〜で怪我をする)
※ 事故などの環境の中で怪我を負ったイメージ。
グループD:方向や相手を表す「to」
前置詞 to は「〜へ向かう(到達点・対象)」というイメージです。
- be married to(〜と結婚している)
※ 結婚相手に向かって矢印が伸び、結びついているイメージ。日本語の「〜と」に引っ張られて with を選ばないように注意! - be known to(〜に知られている)
※ 情報がその相手に届いているイメージ。
【実戦確認テスト】句動詞と重要表現を攻略せよ!
学んだ句動詞の接着ルールと前置詞の本質を使って、次の3問に挑戦してみましょう。
【第1問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
The baby was taken good care ( ) by her grandmother.
(A) of (B) to (C) for
【解答】(A)
【解説】
空所の前後を見ると、was taken good care という受動態の後ろに、空所を挟んで by が置かれています。
この文はもともと、take care of(〜の世話をする)という句動詞が使われている能動態の文から作られたものです。間に入っている good は「よく、十分に」という意味を添える飾りです。
take care of というカタマリは「強力な接着剤」でくっついており、受動態にしても引き裂くことはできません。したがって、of をそのまま残す必要があるため、(A) of が正解になります。
完成した文は「of by」と前置詞が連続する形になりますが、これが大正解の形です。
【第2問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
My sister has been married ( ) a computer programmer for three years.
(A) with (B) to (C) by
【解答】(B)
【解説】
「〜と結婚している」という状態を表す受動態の重要表現です。日本語の「〜と結婚している」という訳につられて、with を選んでしまう受験生が非常に多い超定番のひっかけ問題です。marry は「〜に向かって矢印を伸ばして結びつく」という方向性を伴うニュアンスを持つため、到達点を表す前置詞の to を用いるのが正解です。したがって、(B) to が正解になります。
【第3問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
The mountain top was covered ( ) deep snow.
(A) at (B) in (C) with
【解答】(C)
【解説】
「山頂は深い雪で覆われていた」という状態を表す文です。
雪という物理的な素材が、山頂にピタッと張り付いて覆っているイメージなので、付着や同伴を表す前置詞の with を用いるのが最も適切です。be covered with(〜で覆われている)は受験の超必須イディオムです。 したがって、(C) with が正解になります。
今回のまとめ
- 句動詞(いくつかの単語で1つの動詞を作るもの)は、強力な接着剤でくっついており、引き裂くことはできない。
- 句動詞を受動態にすると、前置詞が2つ連続する(laughed at by など)ことがあるが、これが文法的に正しい。
- by 以外の前置詞を使う受動態は、動作ではなく「主語の状態」にピントが合っている。
- 前置詞それぞれのコアイメージ(at = 一点、with = 付着、in = 空間、to = 方向)と結びつけて覚えると、丸暗記しなくてもスッキリ頭に入る。
これで受動態の単元はすべてコンプリートです! 受動態を丸暗記の公式ではなく、視点の切り替え(カメラワーク)や言葉のカタマリという視点から論理的に攻略することができましたね。
次回からは、英文法において長文読解の超重要パートとなる「準動詞(不定詞・動名詞・分詞)」の解説に入ります!
まずは、すべての準動詞の基本となる「第16講:不定詞の名詞的用法」をお届けします。
動詞だった単語が、ある日突然「名詞」にワープして主語や目的語として働く魔法のルールを解き明かしていきます。どうぞお楽しみに!


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