前回は、受動態の本質が動作を受ける側にピントを合わせる「カメラワークの切り替え」であることを学びました。
今回は、その知識を応用して、第3講で学んだ5文型の中でも特に構造が少し複雑な「第4文型(SVOO)」と「第5文型(SVOC)」の受動態を攻略します。
目的語が2つある第4文型は、どちらを主語にすればいいのか。
イコール関係を持つ第5文型を受動態にすると、形はどう変化するのか。
入試の書き換え問題や英作文で毎年多くの受験生が失点する「罠」も含めて、設計図のルールに従ってすっきりと解き明かします!
第4文型(SVOO)の受動態:2つのカメラワーク

第4文型(SVOO)は、「主語 + 動詞 + 間接目的語(人) + 直接目的語(物)」の形をしており、「人に物を与える(プレゼントする)」という意味を表すのが基本でした。
この文型の最大の特徴は、「目的語(O)」が2つあることです。
受動態は「目的語を主語の位置に持ってくるカメラワーク」でしたね。ということは、目的語が2つある第4文型では、理屈の上では「2通りの受動態」が作れることになります。
次の例文を使って、それぞれのカメラワークを確認してみましょう。
【能動態の文】
My father gave me this watch. (父は私にこの時計をくれた)
パターン①:「人」を主語にするカメラワーク
まずは「私(me)」を主語(I)にして、私が時計を「与えられた」という状態にズームします。
【受動態の文①】
I was given this watch by my father. (私は父からこの時計を与えられた)
動詞は「be動詞 + 過去分詞(was given)」になり、後ろに目的語である「物(this watch)」がそのままポンと残ります。
パターン②:「物」を主語にするカメラワーク
次に「この時計(this watch)」を主語にして、時計が私に「与えられた」という状態にズームします。
【受動態の文②】
This watch was given to me by my father. (この時計は父から私に与えられた)
ここで超重要なルールがあります。 「物」を主語にして受動態を作る場合、後ろに残された「人(me)」の手前に、必ず「to」や「for」といった前置詞を補う必要があります。
なぜ前置詞が必要なのでしょうか。
第4文型の give などの動詞は、もともと「与える相手(人)」に向けて矢印が伸びるイメージを持っています。 「物」を主語にして受動態に切り替えたとき、その矢印の向きをはっきりさせるために、方向を表す前置詞の「to」を補う必要があるのです。
- to を使う動詞(与えるイメージ):give, tell, show, send など
- for を使う動詞(誰かのために作るイメージ):buy, make, find など
【罠!】「私」がケーキに作り変えられる!?

第4文型なら、いつでも「人」と「物」のどちらを主語にしてもいいわけではありません。ここに、入試で毎年多くの受験生が引っかかる罠があります。
例えば、次の文を考えてみましょう。
【能動態の文】
My mother made me a cake. (母は私にケーキを作ってくれた)
この文で、先ほどのように「人(me)」を主語にして受動態を作るとどうなるでしょうか。
I was made a cake by my mother.
直訳するとどうなると思いますか?
「私は母によってケーキに作り変えられた」という、とんでもないホラー映画のような意味になってしまいます。私がケーキの材料になってしまったわけではないので、この受動態は文法的に大バツ(不自然な英語)になります。
このように、buy(買う)や make(作る)といった「forを使う動詞(相手のために何かを用意する動詞)」の場合、基本的に「人」を主語にした受動態は作れません。
もし受動態にするなら、必ず「物」を主語にして、人の前に for を置きます。
○:This cake was made for me by my mother. (このケーキは母が私のために作ってくれた)
この「人を主語にできない動詞」のルールは、正誤問題などで非常によく狙われます。
丸暗記するのではなく、「私がケーキに作られたらおかしいな」と、文の本当の意味を考えれば一瞬で見抜くことができますね!
第5文型(SVOC)の受動態:イコール関係の進化
第5文型(SVOC)は、「主語 + 動詞 + 目的語(O) + 補語(C)」の形をしており、OとCの間に「O = C(主語と述語の関係)」が成り立つのが特徴でした。
第5文型を受動態にするときは、必ず「目的語(O)」を主語に持ってきます。
「補語(C)」は名詞や形容詞であり、動作を受けるターゲット(目的語)ではないため、絶対に主語にすることはできません。
次の例文で設計図を確認しましょう。
【能動態の文】
We call him Tom. (私たちは彼をトムと呼ぶ)
※ him(O)= Tom(C)の関係。
【受動態の文】
He is called Tom by us. (彼は私たちからトムと呼ばれている)
主語(We)が後ろに行き、目的語の him が主語の He に変わります。
動詞は「be動詞 + 過去分詞(is called)」になります。
そして、後ろに残された補語の Tom(C)は、そのまま動詞の直後にポンと残ります。
このとき、能動態で成り立っていた「him(O)= Tom(C)」というイコールの関係は、受動態になっても「He(S)= Tom(C)」という形でそのまま引き継がれます。
主語と補語がイコールで結ばれるこの形は、第3講で学んだ「第2文型(SVC)」と全く同じ構造になります。
つまり、第5文型を受動態にすると、文の形は実質的に「第2文型(SVC)」に進化するのです。
形容詞が補語になっているパターンも見てみましょう。
【能動態の文】
They kept the door open. (彼らはドアを開けたままにした)
※ the door(O)= open(C:形容詞)
【受動態の文】
The door was kept open. (ドアは開けられたままにされた)
目的語の the door が主語になり、補語である open(形容詞)がそのまま後ろにポツンと残っています。
このように、受動態の動詞(was kept)のすぐ後ろに形容詞(open)が残っている文を見かけたら、「あ、これはもともとSVOCの第5文型だったんだな」と見抜けるようになることが、長文読解のスピードアップに直結します。
【実戦確認テスト】複雑な文型の受動態を見抜こう!
学んだ文型と受動態の本質を使って、次の3問に挑戦してみましょう。
【第1問】
次の英文を、下線部の語句を主語にした受動態に書き換えたものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
My friend lent me the notebook.
(A) The notebook was lent me by my friend.
(B) The notebook was lent to me by my friend.
(C) The notebook was lent for me by my friend.
【解答】(B)
【解説】
元の文は、My friend(S) lent(V) me(O1:人) the notebook(O2:物)の第4文型です。
「物(the notebook)」を主語にした受動態を作るため、後ろに残る「人(me)」の手前に前置詞を補う必要があります。
lend(貸す)という動詞は、相手に向けてノートが移動していく「与えるイメージ」を持つ動詞なので、方向を表す前置詞の to を使うのが適切です。 したがって、(B) が正解になります。
【第2問】
次の英文のうち、文法的に誤りがあるものを1つ選びなさい。
(A) A beautiful doll was bought for the girl by her father.
(B) The girl was bought a beautiful doll by her father.
(C) Her father bought the girl a beautiful doll.
【解答】(B)
【解説】
元の文は、(C) の Her father(S) bought(V) the girl(O1:人) a beautiful doll(O2:物)です。
buy(買う)は、相手のために品物を用意する「forを使う動詞(for型動詞)」です。このような動詞の場合、「人(The girl)」を主語にした受動態を作ってしまうと、「その少女が(父親に)買い取られた」という、人身売買のような恐ろしい意味になってしまうため、文法的に不自然になります。したがって、(B) は文法的に誤りであり、これが正解になります。
(A) のように「物(A beautiful doll)」を主語にして for を補う形にするのが正しい受動態です。
【第3問】
次の( )に入れるのに最も適切なものを1つ選びなさい。
The room was ( ) warm all day.
(A) keep (B) keeping (C) kept
【解答】(C)
【解説】
文全体の骨組みに注目します。主語は The room、その後に be動詞の was があります。( )の後ろには warm(暖かい:形容詞)が置かれています。
部屋という物は、自ら進んで何かを「保つ(keepする)」動作をすることはできません。つまり、元々は「誰かがその部屋を暖かい状態(warm)に保っていた(keepしていた)」という、第5文型(keep the room warm)の受動態の文であると見抜く必要があります。主語の The room が「保たれていた」側になるため、受動態(be動詞 + 過去分詞)の形にする必要があります。したがって、過去分詞の (C) kept が正解になります。受動態になった結果、補語だった形容詞の warm がそのまま直後に残っています。
今回のまとめ
- 第4文型(SVOO)の受動態は、物(直接目的語)を主語にするとき、残る人の前に to や for などの前置詞が必要。
- buy や make(forを使う動詞)は、人を主語にした受動態は作れない(ホラーな意味になる!)。
- 第5文型(SVOC)の受動態は、必ず O を主語にする。補語(C)はそのまま後ろに残る。
- SVOCの受動態は、実質的に SVC(第2文型)と同じ「主語 = 補語」の形に進化する。
文型のルールとカメラワークが頭の中で綺麗に繋がると、一見複雑に見える書き換えも、パズルのようにとても論理的に解けるようになります!
次回は、動詞と前置詞などが合体した塊を受動態にする「第15講:句動詞の受動態、受動態の重要表現」をお届けします。
「look up to が受動態になると、前置詞が2つ並んで変な形になるのはなぜ?」といった、受験生を悩ませるポイントをすっきりクリアにしていきます。どうぞお楽しみに!

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